【問題として指摘した事項(例)】

1.顧客に販売する不動産価格が転売により吊り上げられていたと推測されること

 スマートデイズによるシェアハウスビジネスの実際の構造は、オーナー(スルガ銀行の顧客である投資家)に対してシェアハウス建設用土地を販売するまでの転売過程において自ら(又はその関係会社)が中間の買受人となり、そのマージン(利ザヤ)を、他のシェアハウスの空室による保証賃料の逆ザヤに補てんしていたものと推察される。これは今から見れば「自転車操業」であるが、どの時点からそうであったかは不明ではある。

実際に、転売によりどの程度の利ザヤがスマートデイズに渡っていたかが検証できる客観的な証拠は存在しないが、顧客は、元の不動産所有者から直接不動産を購入した場合に比べて、相当に割高な価格で不動産を購入した可能性がある。

顧客がこのような高値を妥当と判断した大きな要因として、スルガ銀行において行われる不動産評価の結果を聞かされ、また、かかる評価に基づく不動産売買代金額にスルガ銀行も 9 割までは融資を付けるということを聞かされることにより、自らの購入価格については、スルガ銀行からの「お墨付き」が与えられている、と理解したことがあったと推測される。

スルガ銀行としても、自らが販売業者に伝えた再評価の結果がそのように利用されていることは、想像可能であったはずで、スルガ銀行としては何ら関知しないことであった、といった弁解は、容易に成り立つものとはいえない。

2.自己資金の残高を証明する通帳の偽造・改ざんなど

(1)通帳の偽造・改ざん

スマートデイズの関連の販売会社により、融資を受けるに際して顧客がスルガ銀行に提出する自己資金の残高を証明する通帳等の偽造・改ざんが相当数行われていた。

スルガ銀行においては、自己資金確認資料(通帳等)については、原本確認を行うべきこととなっていたにもかかわらずその手続が省略され、また、インターネットバンキングについては、入出金明細の確認にあたり Web 上の画面を印刷したものの確認に止まっていたものも多く存在した。

横浜東口支店では、融資実行時に顧客自身が自署、押印した「自己資金確認書」に自己資金額の明細の記入を求めていた。これは、通帳が発行されないインターネットバンキングに係る証憑での自己資金の確認が多くなったことや事務の繁忙のため通帳等の原本を確認することが徹底できなかったことから、原本確認を補完するものあるいは原本確認に代わるものとしての運用であったが、結果として、本来の確認作業が疎かにされることになっていた。

(2)二重契約

スマートデイズの関連の販売会社と顧客により、本来受けることのできる金額より多額の融資を受けるために、実際の売買契約書とは別に売買代金額を水増しした「銀行提出用」の売買契約書が作られていた事案(二重契約)も相当数存在する。

その手口は、①~⑤のようなものであった。なお、手口を分かりやすく示すために、単純化したモデルケースを用いて説明する。

① 販売業者と顧客との間で、スルガ銀行に提出される売買契約書(「銀行用」)と販売業者と顧客との間の実際の売買契約(「実際」)という二種類の契約を締結する。スルガ銀行に提出されるのは「銀行用」の契約書である。顧客と販売業者間の「実際」の契約は、「銀行用」の契約に対する「変更契約」の締結という形や、別途の売買契約の締結という形が取られた。「実際」の契約と「銀行用」の契約は同日付けか、若干日付をずらしている。

 【実際】

売買価格 8500 万円

土地分 5000 万円

建物分 3500 万円

自己資金 なし

【銀行用】

売買価格 1 億円

土地分 6500 万円

建物分 3500 万円

自己資金 1500 万円

② スルガ銀行は、「銀行用」の契約書に基づき 8500 万円の融資を決定する。

③ 顧客はスルガ銀行に対して自己資金 1500 万円の存在を示す必要があるが、その自己資金がない場合には、(a)(b)といった手口により自己資金の偽装が行われた。

  1. 販売業者が顧客から預金通帳等を預かり、残高が 1500 万円あるかのように偽造してスルガ銀行に示す(通帳偽造等)。
  2. 販売業者がそれを一時的に立て替え(融資実行の前日までに顧客のスルガ銀行の口座に顧客名義で 1500 万円を振り込み)、あたかも自己資金が存在するかのような外観を作 出する(見せ金)。

④ スルガ銀行は、8500 万円の融資を実行する。この結果、顧客は自己資金なしに 8500万円の資金を得ることができる。

⑤ 融資実行後、顧客は融資を受けた 8500 万円を売買代金等として販売業者に支払うとともに、((b)の場合は)立て替えられた 1500 万円を返金する(実際には、まず土地代金と諸経費が支払われ、建物の工事に進捗にしたがって建物代金が分割して支払われる)。

この手口では、土地売買契約締結に際して顧客と販売業者の間で変更契約書等が作成されていて、実際は(スルガ銀行の融資を引き出すための「銀行用」の契約書の販売価格から自己資金相当額を差し引いた金額で)安く売買がされているという実態がある(変更契約書等そのものはスルガ銀行は持っていないが、顧客面談で顧客から提示されたものが複数存在する。)。

スルガ銀行が自己資金を 1 割求めていることは顧客も理解していたところであり、変更契約は顧客自らが締結しているものであるから、この手口は顧客も認識のうえで行われていたものと考えられる。

(3)行員の認識

上記のような販売業者(と顧客の共同作業)による手口についてスルガ銀行側が認識していない場合、スルガ銀行はいわば騙された側にあり、被害者であるということになる。

逆にもし、スルガ銀行側が認識していた場合は、スルガ銀行は自己資金1割という内部基準に違反した不適切な融資を行っていたことになる。

この点、スルガ銀行の営業担当者が、二重契約や自己資金の偽装について明確に認識していたことを直接示す物的証拠はなく、当委員会のヒアリングに対しては、二重契約の存在について全員が認識を否定している(ただし、後述の 1 名を除く)。

他方、横浜東口支店の営業担当者はみな「かぼちゃの馬車」のシェアハウス案件に融資を行っているという認識をもっており、「かぼちゃの馬車」が「自己資金ゼロ」という宣伝を行っていた事実を知らなかったとは考えられない。さらに、複数の営業担当者は、顧客が提示した自己資金額について、その年齢、収入等を踏まえると不自然さを感じた案件もあった旨を述べている。したがって、自己資金の存在について、「何らかのトリックが行われているのではないか」という認識はあったと考えるのが自然であるが、現実的には「客観的な証拠資料」が提示されているため、その疑いをさらに追及していくという対応は採られなかった。

この点については、次の営業担当者の供述が最大公約数的な認識を示しているものと思われる。

「(かぼちゃの馬車の件について)自己資金ゼロで、という宣伝がなされていることは知っている。当社の自己資金 1 割という方針とは合わない。客がどのように得心しているかについては、スルガ銀行のほぼ全社員は、客の提出した売買契約書、自己資金確認書があるので、業者が何かやっているとしても「それはそれ、これはこれ」と思ってしまっている所があると思う。ある種の割り切りである。スルガ銀行の社員は、客との間で、売買金額がいくら、スルガは(販売価格の)90 パーセント(までの融資)なので融資額はいくらですね、はい、というやり取りをして、売買契約書に割り印がされ印紙が貼付された原本を受領すれば、それ以上つっこんでいない。」

なお、1 名の営業担当者については、かぼちゃの馬車の販売会社の 1 つから、複数の案件について「銀行用」と「実際」の 2 通りの試算を記載したファイルをメールで受領していたこと、その後、実際にそれらのファイルで「銀行用」と記載されていた金額での契約書が顧客から提出されて融資が実行されたことが確認されている。したがって、この営業担当者については、二重契約と自己資金の偽装についての認識があったものと認められる(当該営業担当者は、当委員会のヒアリングにおいて当該ファイルについては「記憶にない」と述べているが信用できない)。

当該営業担当者から他の営業担当者にこれらのファイルが転送されたことを示す直接の証拠はない。しかし、二重契約や自己資金の偽装が行われている事実が口頭で他の営業担当者に伝えられていたり、(漠然とした形であれ)認識共有されていた可能性も否定できない。

以上より、相当数の行員が、自己資金の偽装の可能性について認識していたと考えられる。

3.フリーローンのセット フリーローンのセット フリーローンのセット販売

 横浜東口支店では、支店長のイニシアチブで、営業担当者とチャネルが一体となりフリーローンを「融資の条件」とするセット販売が行われていた。

*スルガ銀行危機管理委員会による調査結果の要旨(2018年5月15日)から

https://www.surugabank.co.jp/surugabank/kojin/topics/pdf/180515_2.pdf